猛獣、もし戦えば!

北米大陸の肉食獣決戦

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初めに

前回のブログで私は次回のブログは具体的なヒグマ、オオカミ、ピューマの対決について書くと記述しましたがこの対決は北米大陸の最強の肉食獣を決める決戦であり具体的に彼らの対決を記述する前に南北アメリカ大陸の肉食獣の特徴とその対決させる動物の生態を個別に述べてみたいと思い2度に分けてブログにする事に決めました。

と、いうのはこの南北アメリカ大陸がユーラシア大陸、アフリカ大陸と切り離された歴史はそんなに古い時期では無く他の大陸と共通の動物も多いのですがこの南北アメリカ大陸だけで独自に進化した動物も多くヨーロッパやアフリカなどとは生態系がかなり異なるからです。この対決させる3種の動物の中でも特にピューマはアメリカ大陸にしか生息せずかなり特殊な進化をしたネコ科の動物です。原始的な肉食獣であるクマについては北米大陸ユーラシア大陸で殆ど変化はありませんが高度に進化したネコ科、イヌ科の動物は世界中でこの大陸にしか生息しない動物も多く存在しアメリカ大陸と他の大陸とでは生態系がかなり異なっている部分が多いので始めにその事を説明しておいたほうが具体的にこの3種の動物を戦わせるブログを書く時にスムーズになると考えました。そういう訳でこの北米大陸の肉食獣同士の対決は2度に分けて書きたいと考えています。宜しくお願い致します。

アメリカ大陸独自の生態系について

ユーラシア大陸とほぼ同じ気候である北米大陸、アフリカ大陸とほぼ同じ気候である南米大陸の両方ともに共通する動物も多いのですが全く違う進化の過程を結果として経てこのアメリカ大陸独自の動物になってしまったものも多く存在します。

その理由は草食獣も肉食獣も極めて大形の動物がこの南北アメリカ大陸には存在しなかった事が原因だと私は考えています。アフリカと同じ様な気候の南米大陸にはゾウもカバもサイもいません。ネコ科の肉食獣として最大級であるライオンもおらずヒョウすらいません。こうした独自の生態系の為に南米のワニはアフリカのワニと比較して明らかに小型です。しかし爬虫類すべてが小型なのでは無くアナコンダは間違いなく世界最大のニシキヘビです。何を基準してヘビの世界最大の定義を決めるかにもよりますが長さで考えれば世界最大のヘビはアフリカに生息するアミメニシキヘビの9.9メートルがこれまでで最大です。ところがこの9.9メートルのアミメニシキヘビの重量は160キロほどであり、アナコンダは7メートルクラスでも確実に200キロ以上の重さになります。だから世界最大のヘビはアナコンダだと私は考えている訳です。

南米にヒョウはいませんがヒョウとそっくりの模様をしたジャガーが生息しています。ジャガーはヒョウよりも明らかに大きくネコ科の動物ではトラとライオンに次ぐ大きさの猛獣です。ジャガーとヒョウは似ているのはその外観くらいで生態は全く違います。ジャガーの体はヒョウよりもライオンやトラに近くがっちりしていてヒョウの様に木の上から獲物を狙うような事はせずに殆ど木にも登りません。密林の中に住み待ち伏せて獲物を狙うジャガーはちょうどインドのトラに似た存在ですがジャガーの体重は80キロほどでありライオンやトラの半分ほどです。南米の密林の生態系はこのように爬虫類でも哺乳類でも独特です。

北米大陸でも生態系は独特です。ユーラシア大陸に広くトラという最強の肉食獣が分布しているのに同じような気候の北米にはトラはいません。ですから北米のヒグマにはその天敵がいない訳でありその為かヨーロッパのヒグマより一般的に北米のヒグマのほうが小さいのが現実です。但しアラスカあたりのかなり北にいるヒグマはヨーロッパのヒグマと大きさは殆ど変わりません。通常で体重は500キロ以上あり北海道のヒグマの倍以上の体重になります。しかしロッキー山脈に広く生息しているグリズリーと呼ばれる灰色がかったヒグマの体重は300キロから400キロほどであり明らかにヨーロッパのヒグマのほうが大きいのが現実です。

北米大陸ではイヌ科の動物も独特の進化をしており、その代表がコヨーテと呼ばれるキツネとオオカミの間にいるような体格と性格を持っている動物です。しかしアメリカ人はこの「コヨーテ」という言葉を人を馬鹿にする時によく使いますが実際のコヨーテはかなり優れたハンターでありその獲物の中には飼い犬も飼い猫も確実に含まれます。現実にはコヨーテを倒せる飼い犬など殆どいない訳でキツネの様に群れを作らず単独で狩りを行うコヨーテはかなり北米の肉食獣では実力のある動物です。しかしアメリカ人はコヨーテを人を馬鹿にした存在として扱いますし現実的にもそうです。コヨーテにはどうしてもかなわない天敵が2種類いてこの2種類の動物こそが今回のブログの主役になります。

ピューマという動物

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コヨーテを簡単に捕食してしまう動物の一つがこのピューマです。クーガーとも言われその外見からアメリカライオンとも言われていますがこの名前は全く不適格です。

というのは、このピューマの進化過程はライオンやトラやヒョウやジャガーとは全く違っていて飼い猫とほぼ同じ進化の過程を経ています。つまりピューマは確実にライオンよりも飼い猫に近い訳であり飼い猫に近い進化を経た他のどのネコ科の動物よりもピューマの進化は独特です。北米大陸にはオオヤマネコもいます。このオオヤマネコとは別に独自に進化したボブキャットというオオヤマネコもいます。ところがピューマはこれらのオオヤマネコとも全く離れた存在です。大きさはオオヤマネコが10数キロであるのに対してピューマの大きさはヒョウに近く50キロほどになりその体格の大きさも全く違いますが100キロを超える個体もいくつも見つかっていてピューマの大きさはかなり幅がある様です。しかしピューマピューマ以外の飼い猫と同じ道筋に進化したネコとの最も大きな違いはその主になる獲物の違いです。オオヤマネコの主食が自分より小さく弱いウサギであるのに対して飼い猫と同じ道筋に進化したネコ科の動物の中でピューマだけが自分の体重より重く強い動物を主食にしています。具体的にはトナカイやヘラジカがそうでありピューマは非常に優れた運動能力とスピードで戦い自分よりも大きな獲物を倒します。ピューマの運動能力はヒョウ以上でありその戦闘能力はかなり高いものです。アメリカ大陸は南米ではジャガーがその模様が似ているヒョウよりもむしろライオンやトラの様な体格をしていて外見がライオンに似ているピューマがヒョウ以上に敏捷な動きを見せる進化をしている事は非常に興味深い事実です。

シンリンオオカミという動物

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シンリンオオカミという名前を何故ここで付けてこの動物を紹介する必要があるのかというとアメリカ大陸には複数の「オオカミ」という名の付いた動物がいるからです。

南米の草原地帯に生息するタテガミオオカミなどは実際はオオカミでもなんでも無くキツネに近い動物ですが本物のオオカミでしかも北米に限ってもメキシコオオカミとこのシンリンオオカミの2種類がアメリカには生息しています。

シートン動物記」で有名になったオオカミ王ロボは実はメキシコオオカミでありシンリンオオカミではありません。ロボをシートンが捕らえた際にロボの体格や体重についてシートンは細かく記録していますがロボはメキシコオオカミとしてはかなり大型ですがシンリンオオカミの体格から見れば標準的です。オオカミは世界に広く分布していてその体格は南になるほど小さくなり大きな群れを作るのが特徴ですがヨーロッパオオカミやシンリンオオカミなどの北方種は冬季に10頭未満の群れを作るのが一般的で夏場は単独かペアで行動しているのが事実です。冬になって雪が降り小形の獲物が少なくなると群れで大型の動物を獲物にしたほうが合理的である為に冬季だけに群れを作ります。

しかし夏季に小さな獲物ばかりをを獲っている訳では無く大形のシカやイノシシも頻繁に襲います。北方種のオオカミは群れるから強い訳ではありません。1頭であってもその戦闘力は絶大でありその能力はオオカミよりも大きいすべての犬をはるかに上回ります。暖かくなってオオカミが群れでなくなるもう一つの大きな理由は繁殖の為です。通常その群れで繁殖できるのはリーダーのオスとその伴侶のメスだけであり彼らは夏季は子育てで忙しい訳ですがオオカミが犬と違うのは通常大人になるまで3年くらいはかかりそれまでは冬季に群れに付いて獲物の獲り方を学習し3年経って初めて独り立ちします。この子育てで子供が小さく自分たちも群れを持たない状態の時に子供がピューマやヒグマに狙われますが親オオカミが気付けば敢然と単独でも戦い追い払います。四季があり冬が厳しい北方系のオオカミの戦闘能力は非常に優れていてインドオオカミやチョウセンオオカミなどとは別の動物だと思うくらいに違います。イヌ科に大形の動物はいないとされているのは広く分布するオオカミを一緒に扱っているからで、シンリンオオカミやヨーロッパオオカミの体長は150センチを超え肩までの高さは90センチ近くになります。体重はその割には50キロほどと犬と比べて明らかに軽く非常に敏捷な動物です。群れで獲物を攻撃する時にはドールなどとは全く違った波状攻撃を仕掛けそのオオカミ一頭ずつ違った役割を持った攻撃を仕掛けます。しかもネコ科の動物とは全く逆でオオカミの戦いは長期戦であり相手の疲れを計算に入れた攻撃を徹底的に仕掛けます。シンリンオオカミは北米大陸のイヌ科で最も優れたハンターであり極めて戦闘力の高い動物です。

グリズリーという動物

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ロッキー山脈に生息するヒグマの中で毛が灰色を帯びていてグリズリーと呼ばれるヒグマは北米大陸で人間にとって最も危険な存在です。

ピューマやシンリンオオカミが人間を襲う事は殆ど無く人間の住居とかなり離れた山の中で暮らしているのに対してクマの住居は比較的人間の近くであり人間との接触も多く現実に多くの悲劇が起こっています。特にこのグリズリーと呼ばれるクマは非常に気性も荒く攻撃的です。立ち上がれば3メートル近くの身長になりその腕力は間違いなくロッキー山脈の動物ではトップだと思います。

ロックハウスに閉じ込められたグリズリーが自由を欲して大きな木で出来た天井を突き破って逃げ出した事や人間に向かって重さ350キロの丸太を持ち上げて投げ付けた事もあり恐ろしい怪力です。他のヒグマと比較して足が長くスリムである点はグリズリーの特徴でこのヒグマの運動能力の高さを証明しています。片腕で振るうパンチの力は1トン近くの威力になり人間の背骨を折るには充分な力です。ヒグマはヨーロッパではトラの獲物になりますが相手がヒョウになるとたちまち立場は逆転します。ヒョウの体力や戦闘力ではヒグマには到底勝てません。ヒョウはヒグマに攻撃されれば木の上に逃げるしか無くヒョウの敏捷さもスピードも体力が違い過ぎてヒグマには通用しません。

但し、このグリズリーと前に紹介したピューマやシンリンオオカミとではその通常の獲物にしている動物に大きな違いがあります。グリズリーの主食はサケなどの魚であり木の実も好んで食べます。他の草食獣を襲う事も勿論ありますがそんな事は非常にまれでありしかもたいてい襲うのは自分より小さく弱い動物です。クマは確かに剛力であり人間にとって怖い存在ですが、肉食獣として見た場合ネコ科やイヌ科の動物よりも明らかに他の獲物を襲う体格にはなっていません。ですから食料が不足する冬季には冬眠してしまうのが一般的でこの冬眠中に普通は子供を産みます。したがって冬眠明けのまだ食料が少なく子供も小さな時期にはヒグマの子供はピューマやシンリンオオカミに狙われます。こうした関係が北米大陸の生態系です。

あとがき

次回対決させる予定である動物と北米大陸の独自の生態系を記述すればこうした事になります。特徴のある動物が多いのがアメリカ大陸の生態系の面白さでありその中で現実にこの3種類の動物は頻繁に戦いを繰り返しています。

次回のブログではそうしたこれまでの戦いの記録と死に物狂いで両者が戦った場合はどうなるのかの予想まで書いてみたいと思います。宜しくお願い致します。

 

 

 

 

猛獣、もし戦えば!

トラ対ドール

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前書き

ライオンとトラの力は殆ど互角で本当はどちらが強いのかは解りませんが、その生息環境の中で一つ大きな違いがあります。

ライオンがアフリカで単独で暮らしている時にライオンを襲う動物がハイエナやリカオンなど複数いるのに対してトラの生息域でトラを襲う動物は殆どいません。勿論トラが大形の草食獣やイノシシなどを襲って逆に反撃されて殺される事はあります。しかしトラを獲物にする為に襲う動物など殆どいません。そういう意味ではトラは孤高の猛獣ですがただ一つ群れでトラを襲う事を好むのがこのドールです。勿論トラの体力はあらゆる意味でこのドールを上回ります。ドールがトラを襲撃する時には少なくとも5頭から多い時には10頭以上がトラに殺されてしまいます。何故そこまでのリスクがありながらドールがトラを襲うのかは全く解っていませんが、インドから中国やシベリアまで「トラが山オオカミ(ドール)に襲われて常に敗走する」という話は共通していてドールがトラを好んで襲う事は間違いの無い事実の様です。

今回のブログではこのトラとドールの戦いを記述していきたいと思いますがまず最初にトラの生息している地域の生態環境について記述してそれからトラとドールの関係や戦いを記述してみたいと考えています。宜しくお願い致します。

トラの生息環境

ライオンとともにネコ科の最強の猛獣であるトラの生息地はユーラシア大陸に広くあり、この場所にはイヌ科で最大、最強の動物であるオオカミの生息地と広く重なっています。

現実にはトラはオオカミの肉がたいへん好きであり群れから離れて単独で狩りをするオオカミもトラは襲って食べます。しかしオオカミの群れは非常に強力であり通常の群れである5頭から10頭ほどのオオカミの群れと遭遇する事をトラは避けて暮らしています。5頭もいればオオカミの群れのほうがトラよりも強い事は明らかで10頭ほどのオオカミの群れにトラが殺された記録もあります。トラがヒグマよりも強くヒグマを獲物としている事は明らかですが、群れで攻撃してくる動物に対してはネコ科の猛獣よりもヒグマなどの二本足で構えて戦う動物のほうが有利であり、胴が長いネコ科の猛獣の欠点は横からの攻撃に非常に弱い事であり猟師が嗾けた猟犬の群れに囲まれると意外にトラは横からの攻撃に弱い弱点をさらけ出します。

しかしオオカミの群れもトラと戦って犠牲を出さずにトラを殺す事は難しく通常オオカミの群れがトラを襲う事はありません。この両者はなるべく戦わずに同じ地域で生活しているのが現実でありどちらも無駄な怪我や犠牲は避けている訳です。両者とも高度に発達した肉食獣であり無駄な戦いは絶対に行いません。ところがこのオオカミより明らかに小さく非力であるドールは非常に気性が荒く多少の犠牲を覚悟しても積極的にトラを襲います。トラが唯一その生息域で生存を脅かされているのがこのドールです。

デカンの赤犬の正体

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上の写真がドールです。別名をアカオオカミとも呼びます。 ラドヤード・キップリングの有名な小説「ジャングルブック」に登場する「デカンの赤犬」とは本当は犬やオオカミよりもかなり進化の過程が違うこのドールの事です。ドールの体長は75~110センチ程度、体重は10~21キロ程度でありオオカミよりもかなり小さく足が短く頭も小さいのが特徴で尻尾はキツネの様にふさふさしていて尻尾の先が黒いのが特徴です。このドールの体力や戦闘能力は大した事は無く、意外に敵も多くトラを始めヒョウやオオヤマネコ、クマにまでもその獲物にされているのが現実ですが、時には20頭を超える群れを作った時にこのドールの戦闘力は強烈で逆に単独では自分が獲物にされていたこれらすべての動物に猛然と襲い掛かります。

その獲物の襲い方はオオカミの様に縦に並んで獲物を襲うのでは無く、横に一斉に広がって犬のように鳴きながらその驚異的な持久力で獲物を追いかけ続けます。獲物に追いつくと四方から獲物に食らいつきまだ獲物が生きているうちに内臓を食い破り食べ始めます。中国でもヨーロッパでもドールがオオカミよりも恐れられているのはこの残酷な襲撃姿勢にあり懸賞金付きで狩りが行われた為にその数は激減し、現在の推定頭数は2500頭ほどで現在は国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅危惧種(EN)としてレッドリストに指定されています。こういう貴重な動物は是非とも積極的に保護して頭数を増やしてほしいと思います。その動物の習性を人間が感情的に勝手に決めた基準で絶滅させる事には私は断固反対です。

ドール対トラ

このドールとトラの戦いについてはインドのハンティングガイドが1944年に目撃したものが最も詳しく少し引用させてもらいます。

2人のハンティングガイドは22頭のドールが雄のトラと戦っているところを目撃しました。トラは木を背にして自分を囲んだドールに対して唸り声を上げましたがドールたちは耳を動かしただけでした。トラを囲んだドールの外側では子供のドールがじゃれて遊んでいてトラは一瞬そちらのほうを見ました。逆側に死角が出来た状態になりそこから一頭のドールがトラに噛みつきました。トラはそのドールを地面に叩きつけましたが首筋に流れる血を気にしてしゃがんで血を舐めました。その瞬間すべてのドールが一斉にトラに襲い掛かり猛攻撃を加えました。ドールはすぐに攻撃を止めましたがトラの右目はつぶれ口元は引き裂かれていました。5頭のドールがトラに殺されていましたがすぐにまだ元気なドールによる2度目の襲撃が始まりました。3度目の襲撃でトラは腹を引き裂かれて完全に死んでドールたちはトラを食べ始めました。トラに殺されたドールは12頭に及びましたがドールたちはトラを食い殺しました。

その他にも1954年に同じインドで23頭のドールとメスのトラが戦っていた事例が報告されていてこの時には5頭のドールの死体とずたずたに引き裂かれたトラの死体が発見されています。

ドールがトラを襲う事は確実なようで5頭から10頭以上の仲間の犠牲を伴いながら、いずれもトラを食い殺しています。

ドールと他の動物との戦い

勿論ドールの群れはヒョウやクマも確実に襲います。ドールの群れに追われたヒョウが木の上に逃げてしまった例やナマケグマがドールに殺された例も多く報告されていて何故ドールが仲間の犠牲も顧みずにこうした襲撃を行うのかは現在でも謎です。

ドールの攻撃は当然自分よりはるかに大きい水牛やガウルにもおよびドールの死因の3分の1はこうした自分よりもはるかに強い相手に殺されたものであると推定されていますが1頭では戦闘力の弱いドールが群れの力ではるかに自分よりも強い相手を攻撃するのは興味深い事実で、ちょうどアフリカのライオンとリカオンとの関係に似ています。

しかしオオカミとドールとの戦いは殆ど目撃されておらず、アメリカのシンリンオオカミがコヨーテを好んで捕食するのにアジアでもヨーロッパでもドールとオオカミが戦った例が殆ど無いのも興味深い事実です。

あとがき

1頭のドールでは勿論トラとは勝負にすらならず小群のドールでも普通はトラに獲物を奪われています。しかし20頭を超える群れになった時のドールの攻撃力はすさまじくあらゆる自分よりも強力な相手に仲間の犠牲も厭わず徹底的な攻撃を加えます。こうした仲間の犠牲を覚悟した戦いはイヌ科の動物でもドールとリカオンくらいであり他のイヌ科の群れで狩りをする動物には殆ど見られない特殊な特徴です。

こういう部分に私は神秘的な自然の力をどうしても感じてしまいます。自然界は決してトラを無敵の猛獣とはせずにドールという天敵を作り出したとしか思えない気持ちです。ネコ科とイヌ科とは進化の過程が全く違うのに結果としてライオンとリカオン、トラとドールのような生きていく上でのライバルを作り出している訳です。トラもドールも現在は確実に保護が必要な状態であり、是非とも人間のせいで数が激減してしまったものは人間の手で保護して数を戻して生態環境を整えていくべきだと私は思います。

さて、次回のブログですが場所を北アメリカ大陸に変えて「ヒグマ対オオカミ」と出来れば「ヒグマ対ピューマ」、「ピューマ対オオカミ」を記述してみたいと思います。誤解が多いのが「北アメリカにはグリズリーと呼ばれる灰色熊がいるじゃないか」と思われる事ですが灰色熊とは実はヒグマの一種です。ロッキー山脈に生息するヒグマは毛が灰色がかっていて性格も荒くしかもわりと人間の住居の近くで生活しているので恐れられていて現地の人がグリズリーと呼び出した訳です。この3種類の動物の対決は北米大陸の王者の決定戦になるので是非とも同じブログで書きたい気持ちです。宜しくお願い致します。

 

猛獣、もし戦えば!

ゴリラ対ヒョウ

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前書き

私が番外編として「クズリ」の動画を2本挙げさせていただいたのは肉食獣同士の争いでも決して体力や顎の力が絶対では無く「その性格が大きく勝敗を分ける原因もある」事の一つの証明です。クズリはシベリアではトラの獲物でも奪い取ります。ではトラやオオカミの群れがクズリと決死の覚悟で戦ったらクズリより弱いのかといえば決してそうでは無くクズリを殺す能力を充分持っている事は確実でしょう。

しかし彼らはそんな事はせずに簡単にクズリに獲物を奪われています。何故そうなるのかといえばクズリを殺すまで戦う事は自分も怪我をする覚悟が必要になる訳です。高等肉食獣として進化したネコ科やイヌ科の動物は大脳も非常に発達しており自分が怪我をする可能性を出来るだけ避けます。そんな事になればその後獲物を捕る事に支障をきたして自分が餓死する可能性も出てきます。肉食獣同士の戦いは単に体力の差だけでは無く戦う事にデメリットのほうが多ければ無駄な戦いは出来るだけ避けるのが常識で怪我をして自分の戦闘力が落ちればその後の生活に致命的な影響を受ける訳です。

何故今回の「ゴリラ対ヒョウ」のブログの前にこの話をしたのかといえばこの両者の戦いにはこの両者の性格や知能の違いが決定的な勝敗を分ける結果になっているからです。単純な体力差では決して猛獣同士の戦いの結果が出ない事を証明する貴重な実例がこの「ゴリラ対ヒョウ」の戦いになります。そうした中で今回のブログを進めていくつもりです。宜しくお願い致します。

ゴリラの体力とその暮らし

皆様はゴリラの体格やその体力をご存知でしょうか? まずはこの対決を整理する為にもゴリラとはどういう動物であるのかから記述してみたいと思います。

オスのゴリラの成獣の体長は約170~180センチ、体重は150~180キロになります。人間の男性と殆ど身長の差が無いのに体重が大きく違うのはその体に付いた筋肉の差です。ゴリラの握力は低く見ても400キロ以上、そのパンチ力は2トンに及びこの数字はネコ科の猛獣の最高値を大きく上回りヒグマの倍近いパンチ力になります。その腕力は直径10センチの鋼鉄の棒をくの字状に曲げ電線のワイヤーを両腕の力だけで簡単に引きちぎります。恐ろしい怪力であり人間がいくらトレーニングを積んだとしてもゴリラの腕力には到底及びません。

ところが注目すべき点はその生活ぶりです。彼らは通常群れで暮らしていますがその食料は殆ど植物の葉や果実などであり他の動物を襲ってその肉を食べている訳ではありません。山の中で植物を食べて暮らすゴリラは大変な力持ちですが極めて平和な森の住人です。一方のヒョウはサルを獲る為に進化した生粋のネコ科の肉食獣であり、この両者は生息域が重なっています。この両者の対決は現実に何度も起こっています。その詳細を次項で見ていきます。

ゴリラ対ヒョウ

なんとこの怪力を持つゴリラがネコ科の猛獣では割と小柄で体重50キロにも満たないヒョウに何度も殺されています。それも幼獣では無くシルバーバックという背中の毛が銀色に変わった壮年期のオスゴリラがいとも簡単に何度も殺されています。ウガンダでは頭数が少なくなったマウンテンゴリラを保護していますが、この保護は人間の密猟者からの保護よりもむしろゴリラがヒョウに襲われる事を防いでいる意味が強いくらいです。ゴリラは現実には人間の手まで借りてヒョウの攻撃を避けている訳です。

どういう訳でそうなるのかといえば一つはこの両者の習性の違いです。ゴリラが人間と同じ昼行性の動物であり夜は眠るのに対してネコ科の肉食獣であるヒョウは基本的に夜行性です。寝込みをゴリラはいきなり襲われる訳であり始めからこの戦いはヒョウの優勢状態で始まります。もう一つ決定的なのはゴリラの知能は極めて高く痛みに対しての反応に弱い点です。痛さをこらえて戦うよりもヒョウの攻撃から何とか逃げようと考えてしまう訳でありその結果一方的に殺されてしまいます。人間と体重10数キロのオオヤマネコが戦っても人間が勝てる可能性など殆ど無いのと同じです。むしろ日頃からトレーニングをしていたり戦いの経験が無い分ゴリラは人間よりも弱い面があります。ゴリラに人間が近づくと胸の筋肉を叩いて威嚇してくるのは事実ですが、その後人間が襲われた例も少なく人間が致命傷を受けた事は殆どありません。彼らは見かけとは違い平和な森の居住者であってネコ科の肉食獣であるヒョウとは全く違います。この差がこの両者の決定的な勝敗の分かれ目になります。ゴリラはヒョウの通常の獲物の一つにしか過ぎません。

ヒョウと他の猿類との戦い

ヒョウはネコ科ヒョウ亜目の中でどちらかといえばサルを主食にする為に進化したネコであり木登りが得意でサルの逃げる木の上をどこまでも敏捷に追いかけられる能力を持っています。牙がヒョウよりもはるかに大きいマントヒヒでもマンドリルでも1対1でヒョウに勝つ事は極めて難しくこれらのヒヒ類もヒョウの通常の獲物になります。

但し、すべてのサルがヒョウの獲物になる訳ではありません。ヒョウが通常は決して襲わないサルもいます。その一つが意外な事にチンパンジーです。ゴリラよりも明らかにひ弱に見えるチンパンジーは実は非常に危険なサルです。チンパンジーは決して採食だけでは無く他のサルを襲って食べる肉食も頻繁に行います。単独のチンパンジーでもヒョウを見つけると棒を持って殴り掛かります。チンパンジーも非常に知能が発達した動物ですがゴリラとはその知能の構造は全く違います。彼らは戦いを好む性格に進化していて、しかも戦いに道具を使います。ですからヒョウは通常はチンパンジーを襲う事を出来るだけ避けます。

もう一つ、ヒョウが通常戦いを避けるサルは意外な事に人間です。勿論人食いになったヒョウもいますが普通のヒョウは人間との戦いを出来るだけ避けます。ライオンやトラに人間が勝てる訳も無く簡単に殺されてしまいますが体重が人間よりも軽いヒョウになると人間は簡単には殺されません。20世紀にはアフリカで蝶の研究をしていた学者が突然ヒョウに襲われて、近くにあった木の棒で逆にヒョウを殴り殺した例もあります。人間の力も決して捨てたものでは無くヒョウくらいの大きさの肉食獣にとってはかなりの脅威になります。但し木の上からいきなり襲われた場合はヒョウの攻撃力は決して侮り難く反撃はかなり難しくなります。

しかし一般的にヒョウはチンパンジーと人間とは争う事を出来るだけ避けます。確実に獲れる獲物だけを狙うのが肉食獣の特徴であり自分が怪我をしてしまう可能性のある戦いは出来るだけ避けます。ライオンやトラでも余程の飢餓状態で無い限りゾウやカバに襲い掛かる事はありません。怪我をすれば困るのは自分である事を彼らは第一に考えて獲物に襲い掛かります。

あとがき

「サルの惑星」という映画ではチンパンジーが平和主義者でありゴリラが凶暴な性格を持っている様に描かれていましたが、それは外見から人間が勝手に想像した妄想であり現実には類人猿の中で最も凶暴なのは間違いなくチンパンジーです。

外見の印象でその動物の強弱を決めてしまうとこうした誤解が生まれてしまいます。

テレビに良く出てくる可愛くて賢いチンパンジーは実はすべて子供です。大人のチンパンジーは全く人間になつかず非常に危険な動物になり、まず飼い慣らす事は不可能です。決して印象だけで動物を飼っては駄目で一見可愛く見えるアライグマが大人になれば手に負えないほど凶暴で山に捨てに行く事になり日本の環境がそうした外来生物で崩れかかっています。動物を飼う事は命に責任を持つ事です。外見の印象と現実が違う事をもっと真剣に考えて人間は動物と接するべきだと私は思います。

さて、次回のブログですが「トラ対ドール」を書いてみたいと思います。「ドール」とは別名「アカオオカミ」とも言われるイヌ科の動物ですが現実にはオオカミや飼い犬とは縁が遠くかなり原始的なイヌ科の動物でアフリカのリカオンに近い動物です。オオカミよりもかなり小さく秋田犬よりも一回り小柄な動物ですが集団でトラを襲う事で有名です。トラとオオカミはインドからシベリアまで同じ地区にいますがこの両者の対決については殆ど聞かないのに対してオオカミよりも小柄なドールとトラの対決はインドでもシベリアでも良く聞きます。犬のように群れを作って鳴きながら狩りをするドールの実力は決して侮れないものでインドでは何頭ものドールが母ゾウに殺されながら小ゾウを食い殺してしまった事も記録されています。そうした事も踏まえて次回はトラとドールの戦いを記述してみたいと思います。宜しくお願い致します。

 

 

 

猛獣、もし戦えば!

ライオンとトラはどちらが強いのか?

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前書き

今回から具体的に猛獣同士の戦いを記述していきたいと思っていますが初回はこのネコ科の大型獣同士である「ライオン」と「トラ」との対決について考えてみる事にします。

「トラのほうがライオンよりも強いのではないか?」と言われだした歴史は意外に古く古代ではローマ帝国で競技場で戦わせた記録がありこの時にはトラのほうが勝った記録が多く残っていますがライオンはトラと比べて温厚な性格であり積極的に戦わないライオンを戦意が無いので負けにした事も解ってきています。19世紀の頃はインドにはライオンとトラが同居していてライオンの数が急激に減りだしたて再びこの議論が持ち上がりました。「トラがライオンを殺したのではないか?」と当時の人は考え始めた訳です。このライオンが急激に減り始めた原因は現在ではトラの存在とは別にはっきりしてきているのですが当時の人間にとっては解る筈も無くトラがライオンを殺したと思い始めた訳です。

さて、この事とは別に前回全く書けなかった肉食獣には非情な掟がありその掟の中で肉食獣は過酷な野生生活を過ごしている事を最初に述べておきたいと思います。今回のブログではその「肉食獣の掟」に触れてからこの両者を比較しその対決の結果を考えてみたほうが今後のブログにも役立つと私は考えています

宜しくお願い致します。

肉食獣の過酷な掟

原始的なクマのような肉食獣から高等なネコ科やイヌ科の動物まで肉食獣には共通した法則があります。それは小形の肉食獣は同じ過程で進化した大形の肉食獣には決して勝てず、むしろ大形の肉食獣は同じ科の小形の肉食獣の肉を好んで食べるという傾向があり特にこの法則は進化したイヌ科やネコ科の動物に顕著に表れているという事実です。

イヌ科でもネコ科でもその獲物の捕獲方法は同じような方向で進化してきました。つまり大形のネコ科の動物と小形のネコ科の動物の戦い方は基本的に同じな訳で、戦法が同じである以上小形の動物が大形の動物よりも優れているのはスピードだけであり、捕まってしまえば絶対的な体力の差が確実に勝敗を分ける原因になる為に現実的には小形の肉食獣が大形の肉食獣には勝てないという真実です。具体的に言えばライオンとヒョウ、トラとヒョウとの戦いは頻繁に起こっておりその結果は一方的です。ライオンもトラもヒョウを捕まえれば殺して食べるだけでありヒョウがライオンやトラに勝てるのはライオンやトラが老化して体力を無くした場合のみと言っても良く壮年期の両者が戦えばヒョウの体力はライオンやトラには全く通用しません。ライオンもトラも体重200キロに迫る大形のネコ科の猛獣でありヒョウの体重は大きくても50キロほどです。体力の差は歴然としておりヒョウが勝てる可能性など何もありません。ネコ科でいえばライオンやトラはヒョウを襲って食べヒョウは大形のヤマネコを襲って食べ大形のヤマネコは小形のヤマネコを獲物にします。戦法が同じである以上体力の差は絶対です。

これはイヌ科も全く同じでオオカミはコヨーテを好んで襲います。コヨーテは飼い犬を襲い飼い犬はキツネを襲います。しかもこのイヌ科とネコ科についてはこの傾向はリンクしておりヒョウは犬の肉が大好物でありリカオンやドールは群れで積極的にヒョウを狙います。肉食獣の猛獣同士の対決の根元にはこの体力の差が確実にある事を知っておいてください。しかしライオンやトラの次に大きなネコ科の動物は南米のジャガーでありこの地域にはピューマが同居しています。この両者の対決の場合にはそれほど体格に差がある訳でも無く顎の力が強いジャガーとスピードを武器とするピューマでは戦い方も少し異なります。この両者の対決についてはまた別のブログで取り上げる必要があると思います。

ライオンとトラの体力、性格の比較

まずその大きさの比較をしましょう。これまでで調べられた最大のトラはロシアのアムールトラで全長3.9メートル、体重は320キロになります。一方ライオンはアルジェリアで捕獲された全長3.1メートル、体重は260キロほどでありトラのほうが大きい事が解ります。しかしこの単純な大きさの比較には両者の体格の差がある事も考えなければならないと思います。トラはライオンと比較して胴が長く足が短いのに対してサバンナで獲物を追いかけて捕まえるライオンは足が長く胴が短いのが一般的です。トラはユーラシア大陸に広く分布している動物であり一般的に同種の動物は寒い地方になるほどその体格は巨大化します。これは寒さに耐える為には表面積を増やしたほうが効率が良いという「ベルクマンの法則」と言われるものですが現実にロシアのトラは大きく南方のバリドラなどは非常に小柄です。しかしこの「ベルクマンの法則」は絶対では無くインドに住むベンガルタイガーは非常に大柄でありその性格も極めて荒く凶暴です。「マンイーター」と呼ばれる人食いに一番なりやすいのはこのインドのトラと言われており非常に人間にとって危険な存在です。

このトラの力をご紹介します。インドでは11人の人間がかかっても全く動かなかった水牛の死体をトラは一頭で15メートルも引きずっていった記録があります。ロシアではヒグマとトラが同居していますがロシアのトラはこのヒグマを襲います。日本の北海道のヒグマは世界のヒグマの中ではシリアヒグマに続いて小形であり体重200キロ余りですがロシアやアラスカに住むコディアックヒグマと呼ばれるヒグマは最も良く太る秋には体重800キロ近くになります。ロシアのアムールドラはこの自分の数倍の体重のヒグマに襲い掛かり倒します。インドではインドゾウも何度もトラに殺された記録がありトラにとって大きなヒグマを倒す事など何の躊躇もためらいもありません。これがトラの現実の力です。

一方のライオンの力についてですがこのトラの力に全くひけを取らない実力を持っています。ジャングルと呼ばれる密林に住むトラよりもサバンナと呼ばれる草原に住むライオンのほうが人間を襲う傾向は少ないのが現実ですが1898年3月から同年12月にかけてイギリス領東アフリカ(現:ケニア)のツァボ川付近で発生した2頭のたてがみの無いオスライオンによる「ツァボの人食いライオン」と呼ばれる事件は有名で「ゴースト&ダークネス」の題名で映画化されました。この3月から12月までの間にこの二頭のライオンによって135人もの人間が犠牲になり一時期この地区の鉄道工事は完全に中断されました。「人間の肉」の味を覚えたライオンがいかに恐ろしい動物になるのかをこの事件は端的に証明しています。ライオンの力についても1トン近い家畜の牛を殺したライオンがその牛を咥えたまま2メートルのフェンスを飛び越えて逃げた事件もありライオンの攻撃力は2トン以上あるクロサイやもっと体重のあるカバにも及びます。我々人間からは想像を超える体力の持ち主です。

トラとライオンの対決

さて、この両者が戦った場合どうなるのでしょうか。世界の動物園の中ではこの両者を同じ場所で飼っているところもあり動物園内ではトラとライオンは何度も戦っています。

その戦い方を見てみると最初に攻撃を仕掛けてくるのはトラのほうからが確実に多くトラのほうが攻撃性が高い事が解ります。しかしライオンのたてがみは相手の攻撃を防ぐ点ではトラの頬ひげよりもはるかに勝ります。この両者の動物園での戦いの経過も勝ったり負けたりの繰り返しでありライオン対ライオン、トラ対トラの対決と見ていて何も変わりません。したがって私も「引き分け」としか結論の出し方がありません。しかしこの両者がもし死に物狂いで戦った場合は若干トラよりも頭骨が大きいライオンに有利だと思います。ライオンはどちらかといえば群れで生活する動物で共同で狩りを行う習性があるのに対してトラは基本的には単独で生活しています。この両者がもし野生で出会ったと考えると群れ対単独の衝突になる確率も高いと思います。「1対1の対決でなければ不公平だ」と考えるのは人間の勝手な思いであり、この両者は現実に野生でそうした生活をしているのでありこうした衝突は確実にトラのほうが避けるでしょう。

従って私の判断は「ライオンの優勢勝ち」になります。1対1なら互角でも群れと単独では勝敗は明らかです。この両者は体力も戦闘力となる爪の力も顎の力もほぼ互角であり単純にどちらが強いとは決して言えません。ですから結論もはっきりとは出ない訳でこういう回答になってしまいます。ご了承ください。

あとがき

「ライオンとトラとどちらが強いと思うか?」と私が人に聞いた時の反応は「トラ」と答える人が圧倒的に多いのがこれまでの経験でした。草原で寝そべっているライオンよりも密林で単独で暮らすトラのほうがなんとなく動きが俊敏に見えるのがその原因だと私は思っています。

しかしライオンが草原で寝ているのは体力を無駄に使う事を避ける為であり決してライオンがトラに俊敏さで劣る訳ではありません。他の動物を獲物にする肉食獣はいつでも食べ物がそばにある草食獣とは全く違い狩りをしても失敗する事のほうが確実に多い訳でその為に出来るだけ無駄に体力を浪費する事を恐れて体力温存の為にじっとしているだけです。自分よりも大きな獲物を狙う肉食獣は狩りの時に最大限体力を発揮しなければそうした大きな獲物を倒せません。ライオンが寝転がってあまり動かないのもその準備の為です。

また大きく誤解されているのが通常狩りをするメスライオンのほうがオスライオンより強いと思う勘違いです。確かに群れの中でオスライオンが狩りに参加する事は殆どありませんがそれはライオンのオスとメスとではその群れの中での役割分担が違うだけでありオスライオンが戦う相手は自分の群れのテリトリーの中に入ってきた他のオスライオンでありこの時にはオスライオンは決死の覚悟で他のオスライオンと戦い、入ってきたオスライオンを追い出して自分のテリトリーを守り抜かなければなりません。負ければすべてを失います。テリトリーもその群れの中のメスライオンも取られて今度は新しく入ってきたオスライオンが前のオスライオンの子供を皆殺しにして自分のテリトリーや群れを作り直す作業を始めます。現実の野生のライオンの生活は非常に厳しくいつ入ってくるか解らない他のオスライオンと戦う為にはその群れのリーダーであるオスライオンは自分が怪我をしてしまう可能性のある狩りに簡単に参加する訳にはいかず結果として通常の狩猟はメスライオンの仕事になっているだけです。決してオスライオンが怠けている訳ではありません。

さて、次回のブログですが「ヒョウ対ゴリラ」を書いてみたいと思います。この対決も現実に頻繁に起こっています。ライオンやトラと比べて確実に非力な体重50キロほどのヒョウとサルの中では最も大きく最も力が強くオスの体重は150キロを超えるゴリラとの対決です。

しかしこの対決ではヒョウもゴリラも意外な側面を見せます。余裕があればヒョウと他のサルとの対決も記述してみたいと考えています。宜しくお願い致します。

 

猛獣、もし戦えば!

このブログを始めるにあたって

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初めに

猛獣と呼ばれている動物同士が戦えばどちらが勝つのでしょうか?

子供じみたこうした問いに私はまじめに答える為にしばらくこの種のブログを書いていくつもりですが、まず最初に「猛獣、もし戦えば」のブログに対する私の姿勢と基本的な肉食獣についての知識を皆様に知って頂いてそれから具体的な動物同士の戦いのブログを書いていきたいと考えています。そのほうがはるかに不毛な疑問も少なく今後スムーズにブログを書いていけると私は思うからです。

例えば人間にとっては非常に危険な動物である「サイと水牛とはどちらが強いのか」は考える事自体が無駄だと私は思っています。この両者は同じ場所に住んでいて現実には小競り合い程度の戦いはあると思います。その体格や体力、重量から考えてもサイのほうが確実に強いとは思います。しかしこの両者とも草原に生えている草を食料にしている動物同士であり命がけで戦う理由は全くありませんしそんな事はしません。戦う可能性の無い動物同士の戦いを考えるのは無駄です。しかし草食獣同士の戦いをすべて否定する訳ではありません。

例えば「カバ」、この動物は見かけとは違って非常に猛々しい性格をしていて世界最大のワニであるイリエワニとも同居しています。現在のアフリカで人間が犠牲になる数が年間で一番多いのはカバだと言われておりカバと他の草食獣との決死の戦いは現実にも頻繁に起こっています。もう一つは「アフリカゾウ」でありこの動物も他の草食獣とは別格です。ライオンがアフリカゾウを殺すよりもはるかにアフリカゾウがライオンを殺すほうが多いのが現実であり、決して無視できない存在です。こうした草食獣は他の動物とは別であり積極的に今後考えていきたいと思います。

とはいえ「動物同士の戦い」の基礎は間違いなく肉食獣にありまず今回のブログでは肉食獣の特徴とその進化過程の基礎について記述してみたいと思います。宜しくお願い致します。

肉食獣の進化の過程による違い

何度か前のブログで肉食獣であるネコ科とイヌ科について軽く触れましたが今回はもっと具体的に見ていきたいと思います。肉食獣の中でもこの2科は他の肉食獣よりも確実にその性能を進化させていてもっと細分化して考える必要があります。

当然の事ではありますが肉食獣は「その獲物とする動物」をより効率良く獲る為に進化してきています。その進化の過程が同じ科であるネコ科とイヌ科の中でも確実に別れているのがこの科の動物の特徴です。具体的に言えばネコ科の動物は一般的に大きな牙、出し入れ可能な「爪の鞘」の中にある鋭い爪を持っていますがネコ科である筈のチーターは「爪の鞘」などなく爪は剝き出しであり、しかもそれほど鋭い爪を持っていません。「速く走る事」に特化して進化したチーターにとって鞘のある爪などは邪魔でしかなく退化してしまった訳です。しかし同じ場所で同じ「速く走る」為に進化したライオンにはしっかりと「爪の鞘」の中に入った鋭い爪が残っています。これがネコ科の「進化の過程の違い」です。チーターが「チーター亜目」という一種類だけの特化したネコであるのに対してライオンは「ネコ科ヒョウ亜目」の中で進化しており進化の過程が同じネコ科でありながら全く違う訳です。

この「ネコ科ヒョウ亜目」に属する動物は「ライオン」「トラ」「ヒョウ」「ジャガー」だけであり独特の特徴を持っています。まず「咆哮」と呼ぶ雷にも似た声を発せられるのが特徴で肉食獣の中でこれが出来るのは「ネコ科ヒョウ亜目」と「イヌ科イヌ亜目」だけであり他の肉食獣はこの声が出せません。どちらかと言えばヒョウより大きいピューマでも飼い猫と同じ様な声しか出せずこの「咆哮」は出来ません。もう一つ「ネコ科ヒョウ亜目」に属する動物の特徴はその「通常の獲物」が自分の体重よりもはるかに重く大きい動物であるという原則があり、この原則からヒョウだけは少し外れます。ヒョウはサルを獲る為に進化したネコだと思ってもらっても良いです。だから他の「ネコ科ヒョウ亜目」の動物があまり木に登らないのに対してサルを追いかけるヒョウは木登りが得意な訳です。この「ヒョウの獲るサル」に「人」が入った時に「人食い」となる訳でネコ科の動物で「人食い」になるのはたいていがこの「ネコ科ヒョウ亜目」な訳です。

この「自分より大きな動物を通常の獲物にする」肉食獣は殆どネコ科とイヌ科だけであり、イヌ科でのこの役目はオオカミやリカオンやドールが行っています。ネコ科は単独が多くイヌ科はグループで狩りをする事が多いのが一般的ですがこの「自分より大きな動物を通常の獲物にする」肉食獣の共通点は非常に強力な顎の力を持っている事です。自分よりもはるかに大きな動物に対しては殆どネコ科の持つ「鋭い爪」は役には立ちません。爪を武器に使えるのは逃げていく獲物に対してで、自分に向かってくる自分よりもはるかに大きな動物に対しては使う方法が無い訳です。攻撃を仕掛けるのもとどめを刺すのも牙とその牙を使う顎の力が絶対的に必要です。

では具体的に彼らはどういう構造の顎をしているのか次項ではその頭蓋骨を見ていきましょう。

ネコ科の頭蓋骨

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上の写真が「ベンガルドラ」の頭蓋骨です。飼い猫の頭蓋骨も基本的な構造は全く同じで牙や烈肉歯の大きさが頭蓋骨に対する比率と違うだけです。非常にシンプルな構造ですがそのシンプルさゆえに顎が左右に動く事は決して無く上下にのみ動き、噛む力の100%をその牙にかける事が出来ます。人間の噛む力が50キロから60キロであるのに対してトラのその力は300キロを上回ります。しかも人間の様に左右には決して動きません。牙が大きいのは勿論ですがその奥歯まで極めて鋭く巨大です。この顎の力で自分よりはるかに大きな動物を倒せる訳です。

イヌ科の大型獣の頭蓋骨

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上の写真は現在絶滅したと言われている「ニホンオオカミ」の頭蓋骨です。この左右に広がり頭頂部が盛り上がっているのが「オオカミ」と「イヌ」との頭蓋骨の違いでありオオカミとよく似た体形の「イヌの頭蓋骨」はもっと左右の幅が狭く、頭頂部が平らです。頭蓋骨に対する牙の大きさや奥歯の烈肉歯の比率も「オオカミ」と「イヌ」では全く違います。牙も烈肉歯もオオカミは非常に大きく逆にその体形に対しての「腸の長さ」の比率はイヌの半分ほどしかありません。これがオオカミがその体形の割には犬と比べると体重が非常に軽い事の原因でイヌよりもはるかに敏捷に動ける訳です。この頭蓋骨も顎が上下にのみ動き左右には決して動かない構造である事が解ります。

ニホンオオカミは体重30キロ弱の小型のオオカミですが研究での推定される顎の力は約160キロ、IQ(知能指数)はジャーマンシェパードの2倍以上である事が解っています。「イヌの顎の力」の最高値がアメリカンピットブルの140キロほどでありニホンオオカミはトラの体重の6分の1弱程度の大きさでありながらトラの2分の1強の顎の力を持ち群れで自分よりはるかに大きな動物を倒す極めて優れたハンターであった事が解ります。

クマの頭蓋骨

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最後に比較する為にヒグマの頭蓋骨の写真を載せてみました。大きさはトラの頭蓋骨とほぼ同じですがトラやオオカミの頭蓋骨と全く違う事がお解り頂けるでしょうか?

その頭蓋骨の大きさと比較して牙が非常に短く逆に前歯が大きく奥歯がうすの様になっていて尖っていません。このうす状の奥歯は顎が左右にも動く事を示しています。頭蓋骨の形自体もネコ科やイヌ科のものと比較して非常に細長く、これでは顎に力を入れる筋肉が付く部分があまりありませんし牙にすべての顎の力を集中させる事も不可能です。また脳の容量が少ない事も上の2つの写真と比べれば一目瞭然です。

人間を襲い北海道では恐れられるヒグマの頭蓋骨ですらこの程度です。ネコ科やイヌ科が高等肉食獣である事は原始的な肉食獣であるクマと比べれば誰でも解ります。肉食獣の進化の度合いはその歩き方だけでなく「獲物を噛み殺す」顎の力や肉を切り裂く烈肉歯の構造をこうして頭蓋骨を見る事で容易に知る事が出来ます。

あとがき

本格的に動物同士を戦わせてみる前にその前段階のブログを書いてみたのですがどうでしたでしょうか?

ここまでお読み頂いたかたはもう相当肉食獣についての知識をお持ちである事は確実です。こういう知識の前提が無いとその印象だけで動物同士の戦いの勝敗を勝手に決めてしまいがちになります。

今回は全く書けませんでしたが例えば「ワニ」などの噛む力はトラをはるかに上回ります。しかしインドなどでは現実にワニが沢山いる川や湖でもトラは悠々と泳いでいて殆ど襲われて殺された記録がありません。また肉食獣同士にも厳しい掟がある事も全く今回は触れる事が出来ませんでした。こういう謎には今後個別のブログで答えていくつもりです。「猛獣」という定義もかなり難しく猛獣に見えない動物が実は大変怖い能力を持っていたりその逆もあります。現実の野生の世界での生活は大変厳しくその中で暮らしている動物たちはどれも素敵だと私は思います。その世界の中で頂上にいる動物に次回からは具体的に焦点を当てていくつもりです。

次回は「ライオンとトラはどちらが強いのか」を記述してみたいです。宜しくお願い致します。

 

 

 

 

日本の野生動物とそれに関わる諸問題

日本の野生動物と問題点を考える

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前書き

日本に限らずその国家のオリジナルな野生動植物を保護していく事は重要であり、1975年に出来た「ワシントン条約」は国際的な観点からそうした保護を義務付けるものであり「その国家の生態系を守る」事はその国家の国民の人道的な義務になりました。

しかしこの「ワシントン条約」には重大な欠陥があり、その欠陥が現在日本人の第一次産業である農業、漁業に深刻な被害を与えています。具体的に言えば「ワシントン条約」とは絶滅の危機にある動植物の国際取引を禁止するだけの条約であり、絶滅の危機が無い動物については全く関係が無い条約です。しかし特に日本にとって本当に問題なのはこの「絶滅の危機の無い動物」であり「絶滅の危機の無い動物」が「絶滅の危機にある日本の動物」を絶滅させる危険性を持っており日本古来の生態系はこの外来の「絶滅の危機の無い動植物」の為に崩れかけている状況です。日本国内でいう「特定外来種」がまさにそうでありこうした外来種に対して日本古来の生態系は非常に弱く日本古来の生態系は世界的に見ても非常に特殊なものです。

今回のブログではまず海外の事例からそうしたオリジナルの生態系が壊れた事例を記述して日本国内に現在ある問題とその解決に対しての私の意見を述べてみたいと思います。宜しくお願い致します。

夢の楽園を破壊した本当の責任者

日本古来の生態系も世界から見れば確実に特殊ですが世界中で最も特殊な生態系を持っているのは確実にオーストラリア大陸です。

この大陸は極めて古い時代に他の大陸から切り離された為に、ヨーロッパの人間がそこに到着するまでは他の大陸では当たり前にいる獣類(母親が子供を産み母乳で育てる動物)が全くおらずカンガルーやコアラなどの有袋類やカモノハシのような哺乳類でありながら卵を産む単孔類の楽園でした。オーストラリアの固有の生態系にはネズミすらいません。この大陸の生物は世界の中で独特の進化を遂げた固有の動植物だけで出来ておりまさに「夢の楽園」でした。

しかしヨーロッパの人間が移住してくるとその生態系は激変します。原始的な哺乳類である有袋類や単孔類は絶対にそれよりはるかに進化した真獣類には生存競争で勝てない訳です。人間だけでは無く、この大陸を「夢の楽園」だと感じたのは人間と一緒に入ってきた犬や猫や豚などすべての動物であり、これほど住みやすい場所は無かった訳です。

かくしてまずは人間と犬と猫によってこの大陸の生態系は荒らされていきます。有袋類で最大の食肉獣であったタスマニアタイガーは野生化した犬にその獲物を捕る場所を急激に奪われ人間の飼っていた羊を食べ始めた為に絶滅に追い込まれ、かつてはオーストラリア全土に生息していたタスマニアデビルは飼い猫によってその生息地がタスマニア島だけになってしまう事態に陥りました。有袋類の肉食獣は決して真獣類の肉食獣には勝てません。現在でも野生化したディンゴと呼ばれる犬の被害は深刻でオーストラリア政府は莫大な予算をかけてディンゴフェンスを設置しましたがそれでもその効果は限定的でありディンゴは現在でもオーストラリアの固有の生態系を確実に破壊している存在です。ニューギニアにイノシシがいるのは人間が連れてきた豚が野生化したものでありオーストラリアの生態系は確実に破壊されました。

日本の生態系の問題点

日本の生態系でまず最初に被害を受けたのは水の中の動植物でした。戦前から日本にアメリカより輸入されて野生化したウシガエルとそのエサであるアメリカザリガニは日本の生態系を破壊していきました。その後には中国から入ってきたライギョが、そして現在ではアメリカから入ってきたブラックバスブルーギルが漁業に深刻な被害を与えています。そして次には外来哺乳類であるハクビシンやアライグマ、ヌートリアなどが次第に増え始め農業に打撃を与え、日本の歴史文化財を傷つける被害が出てきました。日本が今後考えるべきはこうした外来生物の駆除でしょう。

ここで皆様は私が外来有害昆虫であるセアカゴケグモやアルゼンチンアリについて全く触れていない事に疑問を感じませんか?  セアカゴケグモは極めて毒性の強いクモであり死者まで出していますが私は日本の生態系に影響を与える存在には全くならないと考えています。もっと有害な外来昆虫が入ってきても日本の生態系が一時的には影響を受けるでしょうが特別な対策は必要が無いとも私は考えています。その訳は実は世界最強の昆虫が日本の古来の生態系の中にいるからであり、その昆虫とはほぼ日本全土に生息するオオスズメバチです。かつてアメリカから入ってきたアメリカシロヒトリは日本全土の桜をはじめとする植樹に取りつき深刻な被害を与えましたが現在は絶滅に向かっています。松を痛めるマツクイムシの損害も確実に減少方向に向かっています。日本国内には初めからオオスズメバチという天敵がおり、彼らが外来有害昆虫の過度な増加を確実に食い止めています。

オオスズメバチは人間にとっても深刻な昆虫であり毎年多数の死者を出し、養蜂場のミツバチを絶滅に追い込む有害な存在ですが役にも立っている訳です。爬虫類による死者よりも昆虫による死者のほうが多いのは日本だけだという皮肉な結果の原因であるスズメバチ類が実は生態系の保護にも役立っている存在であり過度な駆除は私は避けるべきだと考えています。

これに対して日本の水辺にはワニも大型のトカゲもおらず、日本の山中にはトラもヒョウもいません。この事が特定外来種だけでは無く、日本古来の動物であるツキノワグマやシカやイノシシの農業被害を深刻にしています。彼らには天敵がいない訳です。この農業被害の増加は日本の野犬駆除と深く関係しています。昭和40年代の日本国内に野犬がいた環境ではこうした動物の増加による被害は殆ど無い状況でした。野犬が彼らの天敵になっていた事は間違いがありません。

しかし私は野犬の駆除が間違った政策であるとは決して思いません。野に放たれて野生化した犬は確実に一種の猛獣です。人間の子供も多数犠牲になっており絶対に駆除が必要な動物でした。放っておけば大変な事になっていたであろう事は間違いがありません。

それではどうすればいいのか?  再び海外の成功事例を出してその後私の考えを述べさせて頂きます。

イエローストーン国立公園の例

現在から100年ほど前にアメリカのイエローストーンでミュールシカを守ろうという運動が始まりました。ミュールシカは大変美しく華麗な鹿でありこれを保護する為にイエローストーン周辺のミュールシカの天敵であるオオカミとピューマは一頭残らず撃ち殺されました。1926年に最後のオオカミが殺されミュールシカの天敵は全くいなくなりました。ところが今度は増えすぎたミュールシカがすべての植物を食べつくして食料が無くなり餓死していく状況になり、イエローストーンは砂漠化し殆ど動物がいない危機的な状況に追い込まれました。そこまで陥って1995年にアメリカ政府は大英断を下します。カナダからシンリンオオカミ32頭を連れてきてこの場所を国立公園に指定しオオカミをこの場所に放しました。

すると凄まじい変化が起こりました。たった五年でこの地区の植物は完全に復活し、その植物を餌とする小動物が集まってきました。ビーバーは川をせき止めるダムを造り始め川の流れが変わり浅瀬が沢山出来ました。この浅瀬の水を求めて大型の草食獣やヒグマなども集まる様になり20年後の2015年にアメリカ政府はこの公園内の生態系が完全に復活したと発表しました。たった32頭のオオカミがわずか20年でこの国立公園の生態系を完全によみがえらせた訳です。このオオカミの再導入は野生動物をめぐる「20世紀最大の実験」と呼ばれ、語り継がれています。私はこういう事例こそ日本は積極的に活用するべきだと思います。

日本にオオカミを入れよう

私が日本の生態系を守る為に提案したいのはこの題名が全てです。日本には明治時代の末期まで日本狼がいました。彼らが食物連鎖の頂点に立つ事で日本は自然の生態系を維持してきた事は間違いの無い事実です。日本にオオカミを再導入するだけでこの国の生態系は確実に蘇り、特定外来種も増えすぎたシカやクマやイノシシの農業被害も無くなりすべてが解決します。

オオカミに対して日本人は過度な恐怖心を持ち過ぎです。我々の祖先は明治時代までオオカミとともに生活してきた歴史を持っています。オオカミが人を襲った記録は非常に少なく、オオカミの好物は人間では無く確実に野生動物と犬の肉です。勿論これは大胆な提案であり慎重に考える問題ですがもともと日本にいた動物を再び戻すだけであり、その被害は特定外来種などよりもはるかに少ないと思います。是非皆様にもご一考頂ければありがたい思いです。

あとがき

実は特定外来種に指定されていなくても外国の動植物は皆様の周りにもたくさん入ってきています。ネズミが大きくなったのは栄養のある食べ物などのせいでは無く海外のドブネズミが日本国内に入ってきただけです。4月ごろに咲くタンポポは西洋タンポポでありタンポポに集まるミツバチも西洋ミツバチが多い事は確実です。これらは故意に持ち込まれたものと勝手に入ってきたものと両方があり、日本古来の日本タンポポも日本ザリガニも今や絶滅危惧種であり10年ほど後には雀すら絶滅危惧種の指定を受けるとの報告もあります。

つまりもう現在の我々の生活の中に当たり前に外来種はあふれている訳であり我々はその中で普通に生活している訳です。日本古来の品種と外来種との違いはその大きさや生命力の強さにあり日本古来の品種はどうしても外来種に負けてしまいます。

とは言っても我々の世代でこれらの品種を絶滅させる事は私は後世の日本人に対しての恥である事は間違いないと思います。日本古来の生態系も我々の使命として絶対に守り抜くべきです。

さて次回からの動物ブログですがしばらく「猛獣もし戦えば」という項目でやらせて頂きたいと思います。その第一回は「トラとライオンはどちらが強いのか」で書こうと考えています。「トラのほうがライオンより強いのではないか」と言われ出した歴史は意外に古く19世紀以降には具体的な論文もかなり出てきていますし、そのきっかけになった事件も勿論あります。そのあたりの話を私の持論も交えてじっくりと書いてみたいとも考えています。宜しくお願い致します。

動物ブログ

鯨は世界を救う

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前書き

クジラ漁と聞いて皆様はまずどうお考えでしょうか?

「可哀そう」「残酷だ」「止めるべきだ」といった感想をお持ちになる人も多いのでは無いでしょうか?   または「ホエールウオッチングが出来なくなる」「クジラが絶滅する」と考えられる人もいると思います。

しかしそうした巷に流れる情報の真偽を出来れば自分で調べてみてください。私自身も絶滅の危機にあるクジラを人間が食べる為に殺す事には絶対に反対です。ところが現実には日本の捕鯨に断固反対しているアメリカが現在でも絶滅の危機にあるホッキョククジラの捕鯨を「原住民の文化を守る」という名目で許可しています。日本の捕鯨に反対している2つの代表国であるアメリカとオーストラリアが現実には牛肉の最大輸出国であり、この「捕鯨反対運動」そのものが確実に商売化している現実があります。今回のブログではそうした各国の思惑と実際のクジラがどういう状態でいるのかという観点から記述していきたいと思います。宜しくお願い致します。

現在のクジラの頭数とその食料

現在は各国が捕鯨を止めた事もあり海洋にいるクジラは確実にその数を増やしています。しかしすべてのクジラが頭数を拡大している訳では無くシロナガスクジラ、ホッキョククジラ、カワイルカ類は確実に保護が必要な状況です。

逆に頭数が増えすぎてそのエサが無くなって深刻な状況にあるのがマッコウクジラ、ミンククジラであり現在マッコウクジラは200万頭以上、ミンククジラの頭数は100万頭を超えていると報告されています。ミンククジラはクジラの中では小型ですがその胃袋の大きさはドラム缶3個分、1日の食料は220キロになります。

クジラの生態やその頭数を調べるという作業自体が実は現在でもかなり難しく捕鯨反対国が行う水溶化したクジラの糞を調べても何が分解されたものなのかまでは解らず実際の状態を調べる為にはクジラを捕獲してその胃袋を直接調べるしか方法が無いのが現実でこの分野で世界で一番優れているのが日本の捕鯨船である事は確実です。南極海に向かう日本の捕鯨船には世界で唯一捕獲したクジラの体重をそのまま測れる装置がありクジラを苦しめずに出来るだけ早く殺す捕鯨技術も日本が一番優れています。つまり毎年発表されるクジラの生態についての報告書は日本の捕鯨船IWC国際捕鯨委員会)に報告したものを発表しているに過ぎず日本が捕鯨を止めればクジラの生態も解らなくなってしまう訳です。日本以外の捕鯨国であるノルウェーやスペインやロシアは殆ど全く非難されず、すでにIWCを脱退して独自の捕鯨を行っており国際的には何の資料も出さない状況であり現在でもIWCに加盟している日本にだけ反捕鯨国の非難が集中しているのもおかしな状況ですがこれが現実です。他国はシーシェパードの妨害を受けた時にはこれをテロ行為とみなして対処するという徹底した態度で捕鯨をしており現実にシーシェパードは国際的に完全にテロリストとして指定されていますが不思議な事にこういう事実は全く報道されません。

そうした中で捕鯨を行っている日本の捕鯨船から2009年に驚くべき報告が上がりました。捕獲したミンククジラの胃袋から大量のスケソウダラが見つかっており「オキアミを主な餌としていたヒゲクジラ類はその頭数の増加により海洋中のオキアミを食べつくして現在はサンマやニシンの稚魚などを主な餌にしている」というものでした。現実に世界の漁獲量は10年前に比べて3分の2ほどに減っており、その原因が増えすぎたヒゲクジラ類による被害である事は明白です。このまま放っておけばさらに世界の漁業に深刻な打撃を与えるのは確実です。そういう状況の中で捕鯨を止める事は世界的に大損害をもたらします。皆様も「今年はサンマが不漁だ」とか「ニシンが捕れない」といった類のニュースを見た事があると思います。その原因が増えすぎたヒゲクジラ類にある事がはっきりと分かってきた訳です。「今年は~が不漁だ」とのニュースはありますがその原因を「増えすぎたクジラのせいだ」というニュースは全く流されません。こんなおかしな理屈は無い訳で日本の捕鯨船はきちんと毎年IWCに報告しています。皆様もこの類のニュースが流れた時にはまずクジラの存在を疑って頂きたいものです。このままでは世界の漁業は壊滅してしまいます。このブログの題名通り「クジラを捕る事は世界の漁業を救う」行為です。

世界の捕鯨の歴史と日本の捕鯨

北欧のいくつかの国と日本以外の国家での捕鯨の歴史は決して古くありません。クジラの肉を全く食べない国家が捕鯨を始めたのは歴史的にはごく最近でありその目的は鯨油を取るという目的からでした。彼らは巨大なクジラを殺して船内に持ち込むと油だけ取って残りは海に捨てる訳です。油を取った後のクジラの肉には何の関心もありませんでした。大型の捕鯨船が作られるようになった18世紀ごろからこうして世界のクジラは頭数を減らしていき、ついに絶滅の危機を迎えるまでになりました。クジラの頭数の減少と日本の捕鯨とは全く関係がありません。ところがそのころから鯨油に代わって石油が使われるようになってきます。1960年代にはアメリカのジョン C リリーという学者がクジラの脳は人間に近いとの論文を発表しました。そうなると捕鯨を続けている日本は野蛮な国家として扱われるようになる訳です。確かにクジラやイルカの脳は複雑であり相当大きいものですがこの論文はそういう印象から勝手に決めつけて書かれたものでありなんの科学的な根拠もありません。イルカやクジラの脳について具体的な検証が行われ始めたのはごく最近の話であり、その結果人間とは全く違う事が解ってきています。ところが感情的な環境保護団体や左翼の知識人たちはこうした科学的な検証を無視して日本人に「捕鯨を止めろ」と喚き散らす訳です。

日本の捕鯨の歴史は非常に古く他国の捕鯨とは全く違います。クジラを祭る神社は日本中にあり、その中でも捕鯨が盛んな和歌山県太地町の「恵比須の宮」は有名です。この神社では捕れたクジラ一頭ずつに戒名を与えて墓を作っており、雌のクジラを捕獲してお腹を開いてみたところ体内に生まれる前の子供がいた為にそのクジラの肉は全く食べずに親子を同じ墓に入れて成仏を願った事でも有名です。シーシェパードはこの太地町で盗撮した映画「ザ コーブ」でアカデミー賞を取りましたがこうした日本人がクジラを敬っている現実は全く無視しています。ドキュメンタリー映画を作るのなら真実を伝えてください。おかしな先入観で一方的な思い込みで作った映画が真実から遠く離れた駄作でしか無い事は明白です。日本人はクジラの肉も油も皮も食べ、その骨は彫刻の材料にしてどうしても食べられない内臓は田畑の肥やしにして一頭獲る度に戒名までつけてその成仏を願っています。そういう事実もきちんと伝えてください。

日本の捕鯨に反対するアメリカは大陸発見時に2千万頭いたバッファローを150頭を切るまで「ネイティブインディアンの食料だ」という理由だけで殺し、オーストラリア人はカンガルー300万頭を虐殺しました。何故そういう歴史を無視して日本人の捕鯨をやめさせようとするのか?  私は彼らには日本人の捕鯨を非難する資格など全く無いとしか思えません。

あとがき

私は日本もそろそろIWCを脱退して独自の捕鯨をしても良いと思っています。イージス艦を一隻捕鯨船に同行させてシーシェパードの妨害があれば沈めたら良いだけです。彼らは国際テロリストに正式に認定されており沈没させても全く国際問題にはなりません。クジラの肉はあらゆる動物の中で飛び抜けて高たんぱく低カロリーな食肉であり、お腹いっぱい食べても全く太らない唯一の肉である事も現在では全く取り上げられていません。クジラが頭数を減らせば漁獲量も上がり世界の漁業が潤う事もきちんと報道するべきだと思います。そもそもIWCとは国際捕鯨委員会であり捕鯨数を決めるのが本来の役目の筈ですが、その加盟国になぜか海が無いはずのコンゴが入っています。海の無い国が捕鯨委員会にいて捕鯨に反対しているという理屈をどうやったら説明できるのでしょうか?    北欧諸国がこんな馬鹿らしい組織から脱退したのは当然だと思います。

さて次回ですが「日本の野生動物とその被害」について書いてみたいと考えています。宜しくお願い致します。