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猛獣、もし戦えば!

トラ対ドール

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前書き

ライオンとトラの力は殆ど互角で本当はどちらが強いのかは解りませんが、その生息環境の中で一つ大きな違いがあります。

ライオンがアフリカで単独で暮らしている時にライオンを襲う動物がハイエナやリカオンなど複数いるのに対してトラの生息域でトラを襲う動物は殆どいません。勿論トラが大形の草食獣やイノシシなどを襲って逆に反撃されて殺される事はあります。しかしトラを獲物にする為に襲う動物など殆どいません。そういう意味ではトラは孤高の猛獣ですがただ一つ群れでトラを襲う事を好むのがこのドールです。勿論トラの体力はあらゆる意味でこのドールを上回ります。ドールがトラを襲撃する時には少なくとも5頭から多い時には10頭以上がトラに殺されてしまいます。何故そこまでのリスクがありながらドールがトラを襲うのかは全く解っていませんが、インドから中国やシベリアまで「トラが山オオカミ(ドール)に襲われて常に敗走する」という話は共通していてドールがトラを好んで襲う事は間違いの無い事実の様です。

今回のブログではこのトラとドールの戦いを記述していきたいと思いますがまず最初にトラの生息している地域の生態環境について記述してそれからトラとドールの関係や戦いを記述してみたいと考えています。宜しくお願い致します。

トラの生息環境

ライオンとともにネコ科の最強の猛獣であるトラの生息地はユーラシア大陸に広くあり、この場所にはイヌ科で最大、最強の動物であるオオカミの生息地と広く重なっています。

現実にはトラはオオカミの肉がたいへん好きであり群れから離れて単独で狩りをするオオカミもトラは襲って食べます。しかしオオカミの群れは非常に強力であり通常の群れである5頭から10頭ほどのオオカミの群れと遭遇する事をトラは避けて暮らしています。5頭もいればオオカミの群れのほうがトラよりも強い事は明らかで10頭ほどのオオカミの群れにトラが殺された記録もあります。トラがヒグマよりも強くヒグマを獲物としている事は明らかですが、群れで攻撃してくる動物に対してはネコ科の猛獣よりもヒグマなどの二本足で構えて戦う動物のほうが有利であり、胴が長いネコ科の猛獣の欠点は横からの攻撃に非常に弱い事であり猟師が嗾けた猟犬の群れに囲まれると意外にトラは横からの攻撃に弱い弱点をさらけ出します。

しかしオオカミの群れもトラと戦って犠牲を出さずにトラを殺す事は難しく通常オオカミの群れがトラを襲う事はありません。この両者はなるべく戦わずに同じ地域で生活しているのが現実でありどちらも無駄な怪我や犠牲は避けている訳です。両者とも高度に発達した肉食獣であり無駄な戦いは絶対に行いません。ところがこのオオカミより明らかに小さく非力であるドールは非常に気性が荒く多少の犠牲を覚悟しても積極的にトラを襲います。トラが唯一その生息域で生存を脅かされているのがこのドールです。

デカンの赤犬の正体

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上の写真がドールです。別名をアカオオカミとも呼びます。 ラドヤード・キップリングの有名な小説「ジャングルブック」に登場する「デカンの赤犬」とは本当は犬やオオカミよりもかなり進化の過程が違うこのドールの事です。ドールの体長は75~110センチ程度、体重は10~21キロ程度でありオオカミよりもかなり小さく足が短く頭も小さいのが特徴で尻尾はキツネの様にふさふさしていて尻尾の先が黒いのが特徴です。このドールの体力や戦闘能力は大した事は無く、意外に敵も多くトラを始めヒョウやオオヤマネコ、クマにまでもその獲物にされているのが現実ですが、時には20頭を超える群れを作った時にこのドールの戦闘力は強烈で逆に単独では自分が獲物にされていたこれらすべての動物に猛然と襲い掛かります。

その獲物の襲い方はオオカミの様に縦に並んで獲物を襲うのでは無く、横に一斉に広がって犬のように鳴きながらその驚異的な持久力で獲物を追いかけ続けます。獲物に追いつくと四方から獲物に食らいつきまだ獲物が生きているうちに内臓を食い破り食べ始めます。中国でもヨーロッパでもドールがオオカミよりも恐れられているのはこの残酷な襲撃姿勢にあり懸賞金付きで狩りが行われた為にその数は激減し、現在の推定頭数は2500頭ほどで現在は国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅危惧種(EN)としてレッドリストに指定されています。こういう貴重な動物は是非とも積極的に保護して頭数を増やしてほしいと思います。その動物の習性を人間が感情的に勝手に決めた基準で絶滅させる事には私は断固反対です。

ドール対トラ

このドールとトラの戦いについてはインドのハンティングガイドが1944年に目撃したものが最も詳しく少し引用させてもらいます。

2人のハンティングガイドは22頭のドールが雄のトラと戦っているところを目撃しました。トラは木を背にして自分を囲んだドールに対して唸り声を上げましたがドールたちは耳を動かしただけでした。トラを囲んだドールの外側では子供のドールがじゃれて遊んでいてトラは一瞬そちらのほうを見ました。逆側に死角が出来た状態になりそこから一頭のドールがトラに噛みつきました。トラはそのドールを地面に叩きつけましたが首筋に流れる血を気にしてしゃがんで血を舐めました。その瞬間すべてのドールが一斉にトラに襲い掛かり猛攻撃を加えました。ドールはすぐに攻撃を止めましたがトラの右目はつぶれ口元は引き裂かれていました。5頭のドールがトラに殺されていましたがすぐにまだ元気なドールによる2度目の襲撃が始まりました。3度目の襲撃でトラは腹を引き裂かれて完全に死んでドールたちはトラを食べ始めました。トラに殺されたドールは12頭に及びましたがドールたちはトラを食い殺しました。

その他にも1954年に同じインドで23頭のドールとメスのトラが戦っていた事例が報告されていてこの時には5頭のドールの死体とずたずたに引き裂かれたトラの死体が発見されています。

ドールがトラを襲う事は確実なようで5頭から10頭以上の仲間の犠牲を伴いながら、いずれもトラを食い殺しています。

ドールと他の動物との戦い

勿論ドールの群れはヒョウやクマも確実に襲います。ドールの群れに追われたヒョウが木の上に逃げてしまった例やナマケグマがドールに殺された例も多く報告されていて何故ドールが仲間の犠牲も顧みずにこうした襲撃を行うのかは現在でも謎です。

ドールの攻撃は当然自分よりはるかに大きい水牛やガウルにもおよびドールの死因の3分の1はこうした自分よりもはるかに強い相手に殺されたものであると推定されていますが1頭では戦闘力の弱いドールが群れの力ではるかに自分よりも強い相手を攻撃するのは興味深い事実で、ちょうどアフリカのライオンとリカオンとの関係に似ています。

しかしオオカミとドールとの戦いは殆ど目撃されておらず、アメリカのシンリンオオカミがコヨーテを好んで捕食するのにアジアでもヨーロッパでもドールとオオカミが戦った例が殆ど無いのも興味深い事実です。

あとがき

1頭のドールでは勿論トラとは勝負にすらならず小群のドールでも普通はトラに獲物を奪われています。しかし20頭を超える群れになった時のドールの攻撃力はすさまじくあらゆる自分よりも強力な相手に仲間の犠牲も厭わず徹底的な攻撃を加えます。こうした仲間の犠牲を覚悟した戦いはイヌ科の動物でもドールとリカオンくらいであり他のイヌ科の群れで狩りをする動物には殆ど見られない特殊な特徴です。

こういう部分に私は神秘的な自然の力をどうしても感じてしまいます。自然界は決してトラを無敵の猛獣とはせずにドールという天敵を作り出したとしか思えない気持ちです。ネコ科とイヌ科とは進化の過程が全く違うのに結果としてライオンとリカオン、トラとドールのような生きていく上でのライバルを作り出している訳です。トラもドールも現在は確実に保護が必要な状態であり、是非とも人間のせいで数が激減してしまったものは人間の手で保護して数を戻して生態環境を整えていくべきだと私は思います。

さて、次回のブログですが場所を北アメリカ大陸に変えて「ヒグマ対オオカミ」と出来れば「ヒグマ対ピューマ」、「ピューマ対オオカミ」を記述してみたいと思います。誤解が多いのが「北アメリカにはグリズリーと呼ばれる灰色熊がいるじゃないか」と思われる事ですが灰色熊とは実はヒグマの一種です。ロッキー山脈に生息するヒグマは毛が灰色がかっていて性格も荒くしかもわりと人間の住居の近くで生活しているので恐れられていて現地の人がグリズリーと呼び出した訳です。この3種類の動物の対決は北米大陸の王者の決定戦になるので是非とも同じブログで書きたい気持ちです。宜しくお願い致します。